【Q143】農業団体への投資がもたらすもの(2008年12月)
はじめまして。都村さんの考えに毎回「なるほどなぁ〜」と納得している者です。
『なんしょんな!香川』で都村さんが農業の株式会社を提案されていたことがありましたよね。そこで、次々に時代を先取りする都村さんに質問です。
この度、香川県は食料自給率の向上などと銘を打って、無利息の融資を行って大規模農業を行う農業従事者や農業団体設立を小規模農家から募集していますが、現在香川県で行われている程度の農業で、融資を受けて大型の農業用機械等を購入して農業を行った場合、収益を上げることが可能なのでしょうか? そして、最終的には農業を株式会社化するという大きな目標を香川県や農協は掲げていますが、そんなことが可能なのでしょうか? 都村さん提案のオーストラリア等外国での規模なら可能かもしれませんが、そんな業者でも収入は激減しているという報道等をよく目にします。「中国産のニンニクが危険だ!」と言っていたのも束の間、「国産は高過ぎる、中国産のニンニクはないのか?」とスーパーで言っている方もいる日本で、農業が産業として成り立っていく可能性はあるのでしょうか?
(P・S)恐らく、失敗することは分かっています。しかし、父親がこの愚策に退職金の全てをつぎ込むと言って聞きません。父親が納得するようなご意見を教えて頂けますと幸いです。(匿名希望 おれ)
【A143】
日本で農業が産業として成り立たない理由については、これまで十分にお話ししてありますし(Q59等参照)、「おれ」さんも失敗することはわかっていると思いますので、追伸の質問に絞ってお答えします。要するにお父さんが農業団体設立に投資しようとするのをどうやって止めたらいいのか? という質問ですね。おそらくお父さんは「日本の国民として食糧自給政策に協力したい」というような正義感から投資を決意しているのだろうと思いますが、これは本人の意志の問題ですから基本的には止めようがありません。ただ、一つだけ説得材料があるとすれば、こういう話ではないかと思います。
これも普通にビジネスの見地から考えれば明らかなのですが、まず、農業は日本ではビジネスとして成り立たない。成り立たないものを無理やりやると、必ず赤字が出ます。普通の会社であれば、赤字が出ると競争原理が働いて潰れていき、健全な自然淘汰が起こるわけです。ところが、「おれ」さんのお父さんが投資しようとしている農業団体のような政府がらみの事業の場合、赤字が出てもまず政府が潰さないわけです。どうするかというと、税金で赤字を埋めるのです。しかし、今の国には埋めるための財源がありませんから、国債を発行するしかありません。つまり、国債を発行してこの事業の赤字を埋めることになるわけです。では、その国債は誰が負担するのか? 国債は60年償還ですから、おそらく「おれ」さんのお父さんから見ればお孫さんかひ孫が払うんですね。つまり、「おれ」さんのお父さんのやっていることは、自分の孫やひ孫の名義で借金を作っているのと同じことです。
もちろんお父さんの出資したお金はあっという間になくなります。百歩譲って、自分のお金がなくなるだけならそれは自業自得ですから、高い学習代を払ったと思えばいいのですが、一番まずいのは、見えない形で自分の孫やひ孫に借金返済の義務を負わせているということです。お父さんは「うまく行かなくても国が税金で埋めてくれる」と思っているかもしれませんが、それは「国」ではなく、自分の孫やひ孫が埋めることになるのです。従って、「孫やひ孫のお金を使ってまでそんなことをやるんですか?」という話で説得されたらいいと思います。普通の親ならいくら何でも孫やひ孫はかわいいでしょうから止めるのではないでしょうか。